令和2年度 (2020年度) 東北大学 理学部 化学科 編入学試験 体験記
目次
はじめに
こちらの記事は令和2年度(2020年度) 東北大学 理学部 化学科の編入試験を受験した某高専生による体験記です。
筆者についての詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
分からないことや聞きたいことがありましたらコメントなどで一言ください。
スペック
某高専物質工学科5年生です(令和元年度現在)。
- 学科の席次:5∼9位
- 当時のTOEICスコア:770(L:400, R:370)
志望理由
化学の分野の中でも有機化学を専攻したいと思っていました。東北大は特に有機系の研究室では名の知れた先生方が多く、また旧帝大ということもあり充実した研究費も国から援助してもらっていることに加え、レベルの高い環境に身を置いて化学者として、研究者として自分自身に磨きをかけたかった、ということが挙げられます。
もう一つの志願理由にはより専門的な話があるのですが、そこは割愛させてもらいます。
試験日程
- 受験日:9月5日(木)
- 合格発表:9月12日(木)
受験科目
- 専門科目(化学)
- 面接試験
また、英語は受験科目にはないためTOEICスコアなどは必要ありませんでした。
筆記試験
大問1
・無機化学(難易度:★★★☆☆)
問1から問6までの全13問です。
水素の同位体、ルシャトリエの原理、酸塩基による中和反応、水素原子の1s軌道の電子の存在確率、水素燃料電池に関する問題でした。
無機化学の分野とは言えども、物理化学よりな問題が多いと感じました。
大問2
・物理化学(難易度:★★★★☆)
問1から問3までの全12問です。
反応速度論、熱力学(仕事、エントロピー、ヘルムホルツエネルギー)、調和振動子、赤外吸収スペクトルに関する問題でした。
この分野が最も難易度が高いと感じました。
特に熱力学の問題で苦戦しました。試験時間内に解放を導出するのは当時の僕には不可能でした。筆者の敗因はここだと痛感しています。
大問3
・有機化学(難易度:★★☆☆☆)
問1から問3までの全8問でした。
アルケンからのcis-trans異性のジオールそれぞれの不斉合成法、アルキンからのcis-trans異性のアルケンそれぞれの不斉合成法、Ethanol、Acetic Acid、Trichloroacetic Acid の酸性度に関して、二置換型̪̪シクロヘキサンの立体配座、三置換シクロヘキサンのE1反応の反応性に関して、第二級アルコールのメチル転移脱水素反応に関する問題でした。
面接での有機系の先生の話によると、筆者は大問3は全問正解していたようです。
面接
面接で聞かれた事項は以下の通りです。
- 合格後の入学は約束できるか
- 筆記試験の問題で間違えた問題の再確認(全部で5、6問聞かれた)
筆記試験を行い、それから1、2時間後に面接試験があります。
面接では無機系、物理化学系、有機系、司会の計4名の教授の方々がいました。
面接試験を受ける時点では既に採点が完了しており、自分の解答が先生方に配布されています。
また、受験生の着席する机の上には問題用紙も置かれており、試験問題に関する話がメインでした。
具体的な面接のイメージは
司会「合格後入学は約束できますか。」
筆者「はい、約束します。」
司会「では次に今日の問題について移ります。」
無機系「まずは無機の分野からです。大問1の(3)の、吸熱反応を生成物側に移動させる方法についてですが、どう考えましたか?」
筆者「はい、気体分子運動の分子の衝突理論に則り、加熱することで系の温度を上げて反応速度を上げると考えました。」
無機系「そう考えたんですね。この問題は速度論的に支配されているのではなく平衡論によって熱力学的に支配されている、ということに注目するとルシャトリエの原理より~」
司会「それでは次に移ります。」
物理化学系「物理化学についての出題です。~」(有機系も同様に行う)
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司会「以上で面接を終了します。お疲れさまでした。」
筆記試験で間違えたところが、本当に間違えたのかそれともケアレスミスなのかを確認しているようでした。
雰囲気は穏やかで対等に会話をすることが出来ました。
結果
不合格
- 受験者数:10人
- 合格者数:3人
筆記試験の出来具合で、受験日当日に落ちたことを確信しました。
最後に
正直なことを言うと、問題の難易度は毎年難しくない程度だと感じています。難易度の高さで言えば筑波大の化学類の方が普通に難しいです(群論とか普通に出題される)。裏を返せば、東北大の理化(理学部化学科)の試験は8、9割を取るのが必要最低限だと感じます。
また、東北大の理化は受験科目に英語がありませんが、事前に800字程度の志願理由書や学校からの調査書を必要とします。推薦入試ではなく筆記試験の編入試験の割には珍しい形をとっています。
試験についてですが無機化学、物理化学に共通して言えるのが量子化学、力学の分野が必ず出題されるのでそこは少し重点的に学習する必要があります。
物理化学は専門的な問題もあれば、物理一般の問題も出題されることもあります。
有機化学については難易度は並だと思います(何年かの過去問でアルキンの合成法として薗頭カップリング反応が問われていたり、ピナコールカップリングが出題されていたりしましたが)。
過去問はHPに掲載されておらず、自分で請求する必要があります。
他に何かありましたら、随時追記という形にて更新します。